プロローグ
星を目指して
ぼくの名前は「高橋 ピヨ彦(タカハシ ピヨヒコ)」。セキュリティエンジニアを夢見るただの一般人だ。今、株式会社St@rdust Security(スターダストセキュリティ) の採用試験を受けに来ている。
St@rdust社は業界トップのセキュリティ企業だ。正直、ぼくの経歴からすると、書類通過の連絡をもらえただけで夢みたいな話だ。
今までは現実味がなかったけど「St@rdust Inc.」 と銀色の文字がデカデカと書かれたビルの前に立つと、やっぱり緊張してくる。
正直まだ技術的にはかなり不安もあるけど…趣味でCTFを少しだけやってきたので、この会社で働くのは憧れだった。
「セキュリティ業界の星に、俺はなる!!」
どこかで聞いたようなセリフで気持ちを奮い立たせ、入り口の自動ドアを勢いよくくぐり抜けた。
採用試験からの脱出
受付の人に案内された部屋は薄暗くて、机、椅子、ノートパソコンが1台、それと前方に大きなモニターがあるだけの簡素な空間だった。
会議で資料の共有などに使用されるのであろうモニターを見ると、攻撃を監視するためのものだろうか、サイバーな感じの地球の映像と各地を飛び回る水色とオレンジ色の点がちかちかと光っている。ああいうの、セキュリティオペレーションセンターとかでよく見るよな。行ったことないけど。
壁に目をやると、蛍光塗料で星座の絵が描かれていた。会社の名前にちなんで星をモチーフにしている会議室なのだろうか?
不安を感じつつも大人しく待ってみた。しかし、一向に面接官が現れる気配はない。
…
……
ちょっと外に出てみようか、そう思って渡されたゲストカードをドアの読み取り口にかざしてみる。
無音。
「…開かない…」
まさかと思ってドアノブをガチャガチャ回してみるが、唯一の出入り口であるドアには鍵が掛かっているようだった。
故障かな。まさか閉じ込められたなんてことはないよね。
「すいませーーん!ドアが壊れてるみたいでーーす!誰か開けてくださーーーい!」
外に声をかけたりドアを叩いたりしていたがなんの反応もない。そうこうしていると、不意にノートパソコンに文字と映像が映し出された。
「…は。え、ええ~~…」
アイと名乗る謎の採用担当の能天気なテンションと、自分が置かれている状況のギャップによって脳みそがバッファオーバーフローし、何とも言えない声を出してしまった。いやいや、いくらなんでもこんな強引な採用試験は聞いたことがない。ムチャクチャすぎるだろ。
…とはいえ、今のところ他に外に出る手立てはなさそうだし、ただ待っているわけにもいかない。
謎を解けって言ってたな…実は謎解きとかクイズとか結構好きなんだよな。
仕方ない、とりあえずやってみるか。
適応力はぼくの長所でもある。気を取り直して、PCの前に座った。
画面をクリックするとメッセージは消え、代わりにCTFの大会でよく見る問題サーバの画面が表示された。
「まずはルールを確認してみるか…」